報道されないガザ戦争の実態

この動画は、ニューズウィーク日本版編集長の長岡義博氏が、元JNN中東局長で戦場取材をされている須賀川拓氏と、元毎日新聞エルサレム支局長の大治朋子氏を招き、「終わりが見えないガザ戦争の出口」について議論したものです。

主な内容は以下の通りです。

1. 終わらない戦争:ネタニヤフ首相と停戦交渉

  • 停戦交渉の現実味のなさ: ガザ側(ハマス)はイスラエル軍の「完全撤退」と「恒久的な停戦」を求め、イスラエル側は「ハマスの統治機能が一切残らないこと」を絶対条件としており、双方の要求が相容れないため、停戦交渉は停滞を繰り返しています ([02:23])。
  • ネタニヤフ首相の戦略: 首相はヘブライ語で「バラガン」(混沌)と呼ばれるアプローチを好み、その時点で「自分の利益に最も叶う最善の選択肢」を選び続けることで、史上最長の政権を維持してきました ([04:32], [04:52])。彼の行動は、主に「極右政党の意向」「国民的なデモや民意」「トランプ元大統領の動向」の3つの要素を見ながら、時間稼ぎをしていると分析されています ([05:47])。
  • 首相への不信感: イスラエル国内では、ネタニヤフ首相が「権力の座に維持すること」を目的として戦争を続けていると見る人が多く、世論調査では約7割がそのように感じています ([08:30], [09:13])。

2. 報道されないガザの惨状とイスラエル社会の疲弊

  • ガザの破壊の現状: ガザ北部のベイト・ハヌーンの映像が紹介され、**「攻撃を受けていない建物が一つもない」**ほどの壊滅的な状況にあることが報告されています ([11:22], [00:00])。これは国際人道法で許されるべきではない「完全な無差別」な絨毯爆撃の状態であると指摘されています ([12:00])。
  • イスラエル市民と兵士の心身の疲弊: イスラエル市民の約3人に2人がPTSDを負っており、子供が暴力的になるなどの影響が家庭や学校にも出ています ([26:09], [27:04])。また、予備役兵の動員が100日、300日と長期化し、仕事や家庭生活に大きな負担をかけ、兵士の自殺も増加しているとのことです ([20:39], [21:40])。
  • 国際社会からの支援と戦費: イスラエルが使用する兵器、特に精密誘導爆弾(JDAM)や防空システム(アロー)は、アメリカやヨーロッパからの莫大な支援によって賄われており、イランからの弾道ミサイル迎撃の戦費は一晩で数百億円に達するほどです ([23:01], [24:33])。

3. 強制移住の議論と周辺国の対応

  • ガザ住民の強制移住について: ガザの約200万人の住民を完全に占領し、強制移住させるという考えは、国際人道法違反であり、あまりにも高等向けな「小学生が考えるような話」で実現は不可能です ([31:55], [33:59])。
  • 周辺アラブ諸国が難民を受け入れない理由: エジプトなどの周辺国は、ガザ住民にハマス(ムスリム同胞団から派生)の影響力を持つ人が紛れ込み、国内の不安定化につながることを恐れており、人道よりも政治的・外交的利益を優先しているという現実があります ([38:56], [40:57])。

4. パレスチナ国家承認と日本の外交スタンス

  • 諸外国の動きの意図: フランスやイギリスなどで見られるパレスチナ国家承認の動きは、イスラエルへの「前向きな圧力」や「ポーズ」であり、直ちに国家として認められるための要件(国境の確定、政府機能の確保など)がパレスチナ自治政府には揃っていないため、現実的な解決策というよりも外交的なメッセージであると分析されています ([44:11], [42:32])。
  • 日本が取るべき行動: 日本はイスラエルとパレスチナ双方との繋がりを維持しているという強みがあります ([44:50])。直ちに国家承認をするのではなく、イギリスのように「一定程度の条件を満たさなければ承認せざるを得ない」という姿勢を外交のステップとして見せることが、イスラエルに戦争終結への圧力をかける上で現実的な選択肢であると提案されています ([47:05], [49:07])。

動画のURL: http://www.youtube.com/watch?v=kTKfq1brKms チャンネル名: ニューズウィーク日本版 公開日: 2025-08-26

【須賀川拓×大治朋子】報道されないガザ戦争の実態/限界イスラエル市民の約6割はPTSDや鬱/“政治の天才”ネタニヤフは戦争を止めない/日本はパレスチナを国家承認すべきか/ガザ完全占領・強制移住の現実味

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