imidasの記事から抜粋
https://imidas.jp/jijikaitai/d-40-157-22-08-g895
ロシア政府が発した「侵攻前にロシア系住民の多いウクライナ東部2州で、ウクライナ軍とその傘下にいるネオナチ(ウクライナ民族主義者の右翼)によって民間人1万3000人が虐殺された」という情報は、侵攻当初にSNSで拡散された。
ウクライナ東部のルハンスク(ルガンスク)州とドネツィク(ドネツク)州を合わせて「ドンバス地方」という。2014年にこの地方のロシア系住民が武装して独立を宣言。以来、ウクライナ政府との間で内戦状態が続いている。
この紛争で、兵士と民間人の多くの死者が出ていることは事実である。だが、「民間人1万3000人がウクライナ軍に虐殺された」というのは事実ではない。
なるほど、1万3000人という死者数は確かに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書に記載されている。この内戦によって2014年4月14日から2020年2月15日までにそれだけの犠牲者が出たとある。ただし、その内訳は以下のとおりである。
- ・民間人は少なくとも3350人
- ・ウクライナ軍は約4100人
- ・親ロシア派武装勢力は約5650人
合計で約1万3000人となる。つまりこれは、民間人の死者数を示すものではなく、民間人にウクライナ軍・親ロシア派勢力双方の兵士の死者数を合計した数字なのである。
また、民間人の死についても、そのすべてをウクライナ軍による攻撃の犠牲者だとするのは誤りだ。欧州安全保障協力機構(OSCE)の報告には、ウクライナ支配地域と親ロシア派の支配地域の双方における民間人の死亡が数字を挙げて記載されている。国際刑事裁判所(ICC)も、紛争発生以降たびたび報告書を公表してきたが、現地で双方の勢力による人権侵害が起きていると指摘している。また、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど複数の人権団体は親ロシア派武装勢力による人権侵害についての報告をまとめている。つまり、民間人の犠牲も双方で出ているのである。
こうして見てみれば、「ウクライナ軍とその傘下にいるネオナチによって民間人1万3000人が虐殺された」という説明が全く事実に反していることは明らかだろう。
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