小型モジュール炉(SMR)と核融合発電 Gemini

小型モジュール炉(SMR)と核融合発電は、どちらも次世代のエネルギー源として注目されていますが、発電の原理技術開発の段階に決定的な違いがあります。

以下に主な違いをまとめます。

項目小型モジュール炉(SMR)核融合発電
発電原理核分裂反応核融合反応
燃料ウランなど(核分裂性物質)重水素・三重水素(水素の同位体)
放射性廃棄物高レベル放射性廃棄物が発生放射化の減衰が比較的早い廃棄物が発生(少量)
技術成熟度従来の原子炉技術の小型化・モジュール化。実用化が近い研究開発段階。商用化には技術的な課題が多く、実用化はまだ先(2050年前後が目標とされることが多い)。
事故時のリスク炉心溶融のリスクはあるが、小型化・自然冷却などで安全性が向上連鎖反応が原理的に起こらないため、暴走のリスクは低い

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1. 発電原理の違い

小型モジュール炉(SMR: Small Modular Reactor)

SMRは、従来の原子力発電所と同じく核分裂反応を利用します。

  • 原理: ウランなどの重い原子核に中性子を当てて分裂させ、その際に発生する熱エネルギーを利用して発電します。
  • 特徴:
    • 従来の大型炉に比べて出力が小さく(一般的に300MW以下)、主要な機器をモジュール化して工場で製造し、現地で組み立てる方式を採用しています。
    • 小型化により、自然冷却などの革新的な安全システムを導入しやすく、従来の原子炉よりも安全性の向上、建設コストの削減、工期の短縮が期待されています。

核融合発電

核融合発電は、核融合反応を利用します。

  • 原理: 太陽のエネルギー源と同じで、重水素や三重水素などの軽い原子核を超高温(約1億度以上)にして融合させ、その際に発生する莫大なエネルギーを利用して発電します。
  • 特徴:
    • 燃料となる重水素は海水から採取可能で、資源がほぼ無尽蔵です。
    • 核分裂のような連鎖反応が原理的に起こらないため、反応が暴走するリスクが極めて低く、安全性が高いとされています。
    • 高レベルの放射性廃棄物がほとんど出ない点も大きなメリットです。

2. その他の主な違い

燃料と資源

  • SMR: 核分裂燃料(ウランなど)を使用するため、資源には限りがあります。
  • 核融合発電: 主に重水素と三重水素を使用し、重水素は海水中に豊富にあるため、燃料資源の枯渇の心配がほとんどありません

放射性廃棄物

  • SMR: 核分裂生成物として、従来の原子力発電と同様に高レベル放射性廃棄物が発生します。
  • 核融合発電: 発電の際に炉の材料が中性子で放射化しますが、その放射能の減衰は核分裂廃棄物と比べて比較的早い(長期的な管理期間が短い)とされています。

技術開発の段階

  • SMR: 既存の核分裂技術の延長線上にあり、各国で設計がすでに存在し、2030年代に向けて商用化が目指されています。
  • 核融合発電: 超高温のプラズマを長時間安定して閉じ込めるための技術的なハードルが非常に高く、商用発電炉の実現は2050年前後、またはそれ以降になると見られています。

コメント

“小型モジュール炉(SMR)と核融合発電 Gemini” への1件のコメント

  1. tito40358のアバター
    tito40358

    小型モジュール炉(SMR)の商用化は、世界的には2020年代後半から2030年代初頭にかけて、日本国内では2030年代から2040年代にかけての実現が目指されています。

    SMRの商用化スケジュールは、国や開発企業、炉型によって異なりますが、世界全体で開発競争が活発化しており、実用化は差し迫った段階にあります。

    開発スケジュールと目標時期
    世界の動向
    SMRの開発を先行している国々では、2020年代後半から2030年代初頭に初号機の運転開始を目指すプロジェクトが動いています。

    アメリカ・ カナダ:

    GE Hitachi社の「BWRX-300」などは、カナダで2020年代後半に運転開始を目指す計画が進んでいます。

    アメリカのいくつかの先進的なSMR(例:高温ガス炉「Xe-100」など)も、2020年代後半から2030年代初頭の商業運転を目指して開発が進められています。

    フランス:

    フランス電力(EDF)の「NUWARD」など、2030年代初頭の着工・運転開始を目指すロードマップが示されています。

    日本の動向
    日本国内では、国内での機器製造・建設・実証運転を通じて、2030年代から2040年代にかけての商用化を目指す計画が示されています。

    三菱重工業や日立GEニュークリア・エナジーなどが開発を進めており、海外のプロジェクトへの参画を通じて技術の維持・強化を図っています。

    SMRの商用化をめぐる課題
    SMRの技術自体は確立されつつありますが、商用化を加速するためには以下の課題をクリアする必要があります。

    経済性の確立:

    小型化によるスケールメリットの喪失を、モジュール化・工場での大量生産によるコスト削減でどこまで克服できるかが鍵となります。

    規制・許認可の整備:

    新型炉設計に対する審査基準や規制の枠組みが各国で整備途中にあり、これがプロジェクトの遅延につながるリスクがあります。

    サプライチェーンの構築:

    SMRの大量導入を見据えた、新たな部品・材料のサプライチェーン(供給網)を構築する必要があります。

    現在、世界各国でSMRの優位性を示すための実証プロジェクトが進行しており、最初の数基の成功がその後の本格的な普及の鍵を握るとされています。

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