💡 動画の概要
この動画は、**メガソーラー(大規模太陽光発電)**の建設を巡る環境問題と、その背景にある日本のエネルギー政策の課題について、当事者や専門家を交えて議論するものです。
1. 注目された事例:千葉県鴨川市
- 問題の案件: 東京ドーム32個分の広さで、約36万本の木を伐採し、47万枚の太陽光パネルを設置する計画でした。
- 住民の懸念: 大規模な森林伐採、それに伴う災害誘発の危険性(土砂災害など)、および自治体の許可を超える工事が行われたこと。
- 行政の対応: 住民の訴えを受け、千葉県は事業者に対し、工事の一時中止と現状復旧を求める行政指導を行いました。
- 制度の課題: この計画は、メガソーラーに対する規制が強化される前の基準(6年前に県の開発許可)で進められており、その後58回もの行政指導が入っても工事を止められなかったのは、法改正の遡及適用(バックフィット)が難しいためと指摘されました。
2. 専門家による議論のポイント
政策の失敗と制度の経緯
- メガソーラーの急増は、2012年に導入された**固定価格買い取り制度(FIT)**の制度設計に大きな問題があったためと指摘されました。
- 高い買い取り価格が設定されたことで、多くの事業者が参入し、乱開発を招きました。
- 環境アセスメント(環境影響評価)の基準が緩かったため、山間部の急斜面など、自然破壊を伴う場所でも開発が進みました。
- 元経産官僚の石川和男氏は、FIT制度の設計が東日本大震災と原子力事故の反動で急ピッチに進められた結果、規制に抜け穴が多く残ったと批判しました。
メガソーラーの是非と「飽和状態」
- 出演者は、**「環境破壊を伴う悪いメガソーラー」と、「屋根や耕作放棄地を利用する良いメガソーラー」**を分けて考えるべきだと主張しました。
- エネルギーアナリストの大場紀章氏は、太陽光発電の新規案件は価格が下落し、既存の電力系統(送電線)に接続可能な土地も減ったため、ピーク時の**0.8%にまで減少しており、現状は「飽和状態」**に近いと説明しました。
- 日本の太陽光発電の導入量は、平地面積あたりでは世界一であり、これ以上大規模に増やすのは物理的にも難しい状況です。
熊出没との関係と将来の電力需要
- クマ出没の増加とメガソーラー開発の因果関係については、データで示すのは困難という見解が示されました。クマの生息地と、ソーラーパネルが設置されやすい杉林(林道がある場所)は異なることがその根拠とされました。
- 将来的にAIやデータセンターなどの普及により電力需要が大幅に増加することが見込まれており、夜間や悪天候時にも安定して電気を供給できる**安定電源(原子力や火力)**の必要性が高まると指摘されました。
3. まとめ
動画では、鴨川市の事例をきっかけに、過去の政策の失敗が引き起こした環境と地域の課題を浮き彫りにしつつ、脱炭素社会の実現のためには、太陽光発電も闇雲な大規模開発ではなく、適切な場所での導入と安定電源の確保が不可欠であるという結論で締めくくられています。
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